羽抜鳥


第13回2017年度日本詩歌句随筆評論協会賞　俳句部門　奨励賞1名


砂山恵子


日本詩歌句随筆評論協会賞　2017年度協会賞　(NPO　日本詩歌句協会の2017年へのリンクが左）


触らねども壁のぬくもり見ゆる春

藤籠に縦と横糸風光る

牡丹の芽恋の女の手の力

月おぼろ舞台の幕の軽きこと

浮かれ猫節くれの指つまみ出す

血天井の言はれの寺の薄暑かな

アキレス腱まつすぐ伸ばし夏空へ

冷酒飲み気骨てふ骨育てをり

病み上がりの母や赤薔薇眩しきと

梅雨の闇海の写真のカレンダー

三四郎池を見てゐる羽抜鳥

炎天やすでに型抜きされてをり

老ピエロハンカチ振るも何も出ず

手花火や添ふ指だけを記憶せり

夜店の灯点きて更なる深き闇　　

違反車を涼しき顔で誘導す

油照言葉を選ぶ二人かな

白日傘足元だけを見てをりぬ

単帯言ひ訳などはせぬものと

井戸の水一心に汲む終戦忌

赤カンナ新キャプテンが挨拶す

鳳仙花歯の抜けきらぬ子等連れて

携帯をマナーモードに流星雨

乗り換へに遠き海鳴り葉月尽

守護霊と言ふもの信じ胡桃割

一年の夕暮れ集め冬落葉

いつさいの言ひ訳せずに木の実落つ

狐火を見たせゐかもと占ひ師

雪といふモノクロ映画に近きもの
了

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